私を変えた男:谷崎潤一郎

今回は私が日本文化を志すようになったきっかけについてご説明したいと思います。会社を辞め、文系の研究者になろうとは決めたものの、どんな領域でどんな研究ができるのか、その時は全くわからない状態のまま、ただただ時間だけが過ぎていきました。

ですが、そんなある日、電車で本を読んでいた時のことです。あるフレーズが目に飛び込んできました。正確なフレーズは忘れてしまいましたが、それは「茶の掛物には恋歌は用いない」といった趣旨の文言を谷崎潤一郎が書いていたのです。私は椅子から飛び上がりそうになりました。非常に驚いたからです。

なるほど、お茶の世界には、「わび」「さび」と言う言葉に代表されるように枯淡なイメージがあります。恋歌、つまり色恋の世界とはおおよそ対極にある世界だと言われても納得せざるを得ません。

ですが・・・
なるほど谷崎の言っていることはまったくの嘘ではないだろう。だが、日本の伝統文学や芸能と呼ばれるものは皆、恋を大きなテーマとしている。それなのになぜ茶の湯だけが恋歌を忌避しているのだろう。それは日本の伝統に反しないことなのか。
こう私は感じました。

その結果、次のような結論に至ることになります。
これは研究テーマになる。なぜなら、他の日本の伝統文化と言われるものは皆、恋、もしくは恋歌を主題としてきた。和歌はもちろんのこと、『伊勢物語』『源氏物語』、能、歌舞伎などなど、である。ではなぜ茶の湯だけが恋を主題としてはいけなかったのか?それはどの時点から、どういった理由で禁止されたものだったのか。これを解くことで、茶の湯の独自性や歴史の変遷、また恋歌に対するイメージなどが明らかにできるだろう。

この谷崎のわずか数十文字によって、私は日本文化研究を志すことになるのです。私を変えたのは、間違いなく谷崎潤一郎という男でした。

以後、しばらく茶の湯と恋歌の関係について研究を行うことになります。私がおおよそ30歳の頃のお話でした。

今回も読んでくださってありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

4件の返信

  1. rain lily より:

    おはようございます☀
    確かにその数十文字は谷崎潤一郎の言葉なのでしょうが、そこに目を付けて食い付かれた先生が凄いです😊❣️
    普通の人なら「へえ、そうなんだ」で終わるところでしょうね。
    やっぱり先生は「異常」ですね。
    異常、バンザイ😊❗️

  2. いつもありがとうございます!!!

    時々こうしたことがございます☺️
    そこだけ光ってというか、濃く見える感じですかねーーー???
    絵でもそういうことがあります☺️

    異常、大歓迎!!!
    異常、バンザイです!!!

    • rain lily より:

      「そこだけ光って」、「濃く見える感じ」、わかります❗️私もたまにそういうことがあります😊
      まるで、「気づいてほしい!」と文字に呼びかけられているような…
      先生にはきっと、そういう出会いが多いのでしょうね😊

      • 同じですね!!!
        不思議な現象ですが、もしかすると無意識のうちに求めているのかもしれませんね☺️
        そうですね、日常生活の中ではよく出会います☺️
        ありがたいことです!!!

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