「痴漢」の研究をしていると言うと、必ずと言っていいほど聞かれるのが、「日本は他の国に比べて痴漢が本当に多いんですか」という問いです。なるほど、前に書いたように日本は「痴漢大国」や「痴漢天国」と言われることが今まで多くありました。ですからそのような疑問を持っても当然です。
かく言う私も、逆の立場なら、専門家に聞いてみたいと思うことでしょう。
ですが、結論から言えば、実際に比較するのは無理だと言えるでしょう。
なぜならまず大前提として「痴漢」の定義がそれぞれの国で異なるからです。触ったりするのを「痴漢」という国と、それだけだと「痴漢」とは見做さない国が実際には存在ます。調査するには、まずこの「痴漢」の定義をまず同じにする必要があります。国際的な定義が必要になってくるわけです。
まずその「痴漢」の定義ができたとしましょう。次に問題になるのは、いくつかの指標を設けないといけません。同じ指標で調査と評価をしないと比較になりませんからね。ある程度「痴漢」の定義を明確にできればこの問題は少なくなりますが。
ただ、例えばですが、日本とアメリカでどちらが「痴漢」が多いかを比べるとしましょう。その際、あなたなら何を基準にしてその多寡を測定するでしょうか。
まず考えられるのが、一年間に警察に検挙された痴漢の数ですね。ですが、これはあくまでも検挙された数に過ぎません。これだけだと、実際にどのくらいの数の被害があったのかはわからないですよね。これは訴え出た人の数の場合にも同じことが言えます。
では、実際に痴漢がどのくらいいるのか実態調査をしたとしましょう。ですが、これもかなり難しいと言わざるを得ません。すべての「痴漢」を見つけること自体が無理なことと、あと路線や時間帯によってもかなり差があったり、都会と地方でも相当な違いがあったりするからです(一般的には、日本では朝と夜の通勤時間帯が多いのですが、どちらかと言えば夜の方が多いとか、春から夏にかけての時期が一番多いなどと言われます)。
もしかすると、努力とやる気次第では、一日だけ東京とニューヨークの地下鉄の一両だけというごく限られた範囲でなら全数把握が可能となり、そこから統計的に平均値というか推定値を出すことができるかもしれません。
ですが、これも現実的には無理そうです。警察が調査するのか、NPOなどのどこがの団体が行うのか。そしてその結果を責任を持ってどこが、いつの時点で発表するのか、といった様々な問題で、相当揉めそうですね。
ですから他国と比べてどうこうというよりも、私たちがまずなすべきは、「日本の痴漢」をなくすことです。他国は今は置いておきましょう。多かろうが、少なかろうが性犯罪は「魂の殺人」とも言われます。ですから、この殺人事件を一つでも減らせるように努力する必要があるのです。
明日は今日よりも少なく、という気持ちで一つずつでも痴漢被害を減らしていきましょう。いつか「痴漢のない国。日本」と言われるようになるように。
今日も読んでくださってありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。
4件の返信
痴漢が他国に比べて多いか少ないか、それはイメージの問題なのですね!とても納得がいきました😊!
痴漢の多寡は、おっしゃる通り、正しく統計を取ったり比較したりが不可能ですものね。
「日本の痴漢」を一つでも無くしていくこと、それが何よりも大切なこと、、激しく同感です!
前回に続き明快な論理展開で、とてもわかりやすく、心地よく読ませていただきました。どうもありがとうございました😊
次回も楽しみにしております!😊❣️
ありがとうございました!!!
おっしゃる通り、作られたイメージでもあるのです。
もっと少なくしないといけないと思いますが・・・。
ただその時に他国より多いからなどという理由ではダメだと思うのです。
それだとどこか他人事のような気がするからです。
もっと内からの切実な声に耳を傾け、自分事として、みんなが真剣に取り組むべき問題だと思います。
いつも励ましのお言葉ありがとうございます!!!
これからも頑張って書きますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今日もコメント、ありがとうございました!!!
「他国より多いから」という理由は「他人事のような気がする」。もっと「内からの切実な声に耳を傾け、自分事とし、みんなが真剣に取り組むべき問題」。激しく同意します!!!素晴らしいご研究の共有をありがとうございました😊!!!
こちらこそ、いつもありがとうございます☺️
私も機会があれば、ぜひその取り組みに参加してみたいと思っています☺️
絶対に無くしたいものなので。
では、引き続きよろしくお願いいたします🙇♂️