痴漢被害を乗り越えて

事件は突然起こりました。それは高校1年生の時でした。

ある日、あれは50歳くらいの男の人だったでしょうか。学校帰りの電車の中で僕は、ものすごく激しい「痴漢」に遭いました。

満員電車の中で、手から始まり、体中をくまなく触られました。私は驚くと同時に、体が固まってしまいました。もちろんできるだけ嫌がっているのを伝えようと、必死に逃げようとしました。ですが、無理でした。いくら体を逸らしても相手はプロのような人だったからです。どのようにしてもうまく手を入れてきます。とても手慣れていたのです。

私がすごくショックだったことは「痴漢」に触られたことではありません。ショックだったのは、周りの人が見て見ぬふりをして助けてくれなかったことです。男性同士だったからでしょうか。本当に誰も助けてはくれませんでした。

これは一回だけの被害にとどまりませんでした。同じ人に何度も「痴漢」されましたし、違う男の人にも「痴漢」されました。ある時には女の人からも被害を受けました。いわゆる「痴女」ですね。今から思えば、おそらく彼らには、ある情報ネットワークが存在し、その情報が共有されていたため、私はそのターゲットになっていたのだと思います。

つまり、私にとって、高校の3年間はまさに「痴漢」との戦いの日々でもあったわけです。ちなみに「痴漢」は今では犯罪ですが、当時はまったく犯罪とはみなされていませんでした。それだけに警察にも言えませんし、駅員さんにも言えない、親にも言えない、というふうに相談できる人も皆無で、ただただ耐えるしかなかったのです。これが1980年代半ばの話です。

これは随分とそこから後のこと(2010年代)になるのですが、「痴漢」という存在について深く考えるようになりました。なぜなら、そもそも「痴漢」とは漢字の意味だけで言えば「バカな男」という意味しかありません。それがいつの間にか「女性に淫らな行為をする男」という意味へと変わったのです。この意味変化はいつどうして起こったのでしょうか?このことがとても気になりました。

ですから私はこれを徹底的に調べ上げて、合計四本の論文にまとめて発表しました。具体的には「痴漢の文化史ー『痴漢』から『チカン』へ」、「世界『痴漢』発見」、「禅と痴漢」、「痴漢の変容ー中国から日本への伝播と変容」の四本です。この内、「痴漢の文化史」はフランスの小説などにも引用されましたし、「禅と痴漢」は「ろんぶ〜ん」というEテレの番組で紹介され、テレビ出演もし(スタジオ収録)、ちょっとした話題になりました。

これらは私の「痴漢」たちへのささやかな復讐です。もちろん心の傷は今でも深く刻まれていて、一生消えることはありません。ですが、いつか「痴漢」の正体を少しでも暴くことで、少しでも彼らに復讐してやろうとという強い思いがあったことも確かです。そうした意志がこれらの論文を私に書かせたのです。

次回は、これらの論文のことをご存じない方のために、論文の内容について、そこで何がわかったのかを、その結果をかいつまんでお伝えしたいと思います。
少し研究のことになりますので、研究に関心のある方はお楽しみに!!!
では、引き続きよろしくお願いいたします!!!
本日も読んでくださってありがとうございました。

2件の返信

  1. rain lily より:

    すみません、こんな可愛らしい美少年ですと、私も痴漢したくなるかも😊❤️
    冗談です(笑) 聞き流してください。

    このような衝撃的な事件を4本の論文に昇華させた先生は素晴らしいです😊!そこが人間力というものですね。もちろん研究者としての資質がおありだったからに違いありませんが。

    論文の内容、ご研究のこと、次回も楽しみにしております😊!

  2. ハハハハ、いえいえ。
    僕はごく普通の人間ですから😀

    次回も読んでいいただけるとありがたいです😀❤️
    わかりやすく書くつもりなので。
    では、引き続きよろしくお願いいたします🙇‍♂️

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